人は皆
誰かの生まれ変わりなのかも、と
ふと考える瞬間がある。
いつもの事だけど
その日も夜中に目が覚めた。
あれは図面に入れただろうか…
これは図面に入れただろうか…
そんな事を虚空で何度もなぞり
枕の裏に忍ばせたスマホに手を伸ばす。
腕時計のライトを照らすと時間は夜中の3時。
暗闇の中、記憶をスマホに移し再びベッドで横になると
身体がずしりと深く沈んだ気がした。
真っ暗な室内で1歳8ヶ月の娘の寝顔をぼんやり眺めてみる。
目が慣れてくると何故だか娘の目が開いているように見えた。
まさか?!
じっと見てみると娘は暗闇の中でこちらを見つめている。
ピッピ?
家内を起こさないように声を殺して娘の愛称を呼んだ。
ピッピ起きてたの?
娘は横になったままこちらを見つめて
「パーパ」、と小さく言った。
そしてまた、ただひたすら見つめている。
1歳8ヶ月の娘が大人びて見えた。
なんだか気まずくて
時間がとてもゆっくり流れている気がして
とりあえず何か喋らないと、と思い…
「ピッピ…」と、きり出し
「パーパもマーマも
ピッピの事が大好きだからね」
と娘を見つめて心を込めて言った。
すると
娘は安心するように目を閉じて
眠りに就いた。スヤスヤと寝息まで立てて。
その「間」を待っていたかのように
娘のその隣で寝ているはずの家内が
小さく「ありがとう」と呟いた。
天井を見上げ
大きく息を吐きだし
胸をなで下ろす。
ママの分も言っといて良かったぁ~、と。
翌朝、家内に訊くと
まったく覚えていなかった。
という事は
きっと娘も寝ぼけていただけの事だろうか。
時々、ふと娘が誰かの生まれ変わりのように感じ、
厳しく叱れなくなったりする。
優しかった祖母の面影を娘のどこかに探すみたいに。
simple blog updated on 2013.04.12
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