COLUMN

剣道

kendou

昨夜は
テレビの前で
自分の過去の
記憶を思い出し
泣いてしまった。


男は男らしく…
小学生から高校卒業まで
剣道に明け暮れていた。
明け暮れていた、とは
言っても、
キツイ、クルシイ、
ツライ事の方が
多くて
いつも休む理由を
朝から探していた。
やめたくてもやめられない
約束をした。
ある時…
ふと気付いた。
やめられないのなら
立ち向かうしかないと。
キツさや苦しみに
勝つには…
一番怖い先生に
嫌がられるぐらい毎回
立ち向かってみようと。
目標を県内個人戦最大の
「富川杯」に定め
死に物狂いで怖い先生に
立ち向かい稽古した。
稽古が始まると
誰よりも先に
怖い先生の前に並び
何度叩きのめされても
遠くに突き飛ばされても
ひたすら打ち込んで行った。
そして
「富川杯」当日。
何年も剣道の基本や技、心構えや心の強さを稽古してきた私が…
剣道歴一年半のめちゃくちゃに竹刀を振り回す相手に負けた。一瞬の出来事みたいに2本の旗が挙がり、スローモーションのようにゆっくりと3本めの旗が…
参加選手が多く、試合数も多いせいか、他の剣道の大会にはない「残心(決め)」が無くても当たれば一本!の審判だった。
けれど、例えどんな相手でも本物の侍なら…刀なら切られている。
負けは負けなのだ。
それをしっかり認め
深く一礼した。
一年がかりの早朝稽古と
放課後の稽古が一瞬で
終わった。
悔しさと情けなさで
暫くの間
武道館の壁に向かい
正座したまま声を殺して
ひたすら泣いた。
壁にもたれた面金の隙間から涙がこぼれ落ちていた。
どんな怪我をしても
勝ちたかった。
勝ちたい気持ちが負けていたのだろう。
そして、
誰よりも怖い先生たちと稽古してきた自分への自信の自惚れが一瞬の隙を生んだのかもしれない。

暫くして涙が乾いた後、
誰とも話さず
面を外し防具を片付け
親兄弟に何も告げず
奥武山から宜野湾まで
剣道着姿のまま防具を
担いでひたすら歩いた。
負けた事を何度も思い出し
泣きながら歩き続けた。
私は
あの日を
あの瞬間を
今でも決して忘れない。
次の日から涙をバネに
今まで以上に稽古をし
筋トレを始めた。
もっともっと強くなる為に
自分に負けない為に。

いま振り返ると…
どんなに辛く苦しくても
「約束」という形で
剣道をやめさせなかった
親に感謝している。



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